牧師になったばかりのある日、初めて教会に来た人が私に、「牧師さんは奇跡を信じているんですか？」と尋ねました。私は「いいえ、私は奇跡を信じていません。｣と答えました。そして、少し驚いたようすのその人の顔を見ながら、「私は奇跡を行うことが出来る神を信じているんです｣と続けました。すると彼は、｢なるほど。神には何でも出来ますからねえ」と納得したのでした。キリストは、奇跡を行うことが出来る神であると同時に、人間である方です。イエス・キリスト聖霊により、処女マリアを通して誕生されましたが、これは、神の子が原罪のない人間になられたということです。

　第一に、キリストは、働きにおいて神であると同時に人でした。人間の祈りにこたえて神が奇跡されるのとは違い、キリストはご自分の神としての力で奇跡を行われました。罪の赦しと霊的解放、精神と肉体のいやし、死者の復活、自然の支配など、キリストが行われた多くの跡は、キリストが、人間には解決できないすべての問題から私たちを完全に救うことができる神であることの証拠なのです。しかし、キリストは、神の力をご自分のためには用いませんでした。人生に起こるあらゆる問題試練を一人の人間として経験し、それらに勝利されたのです。こうして、キリストは私たちすべての問題と悩みを理解し、慰めと勝利を与えることができる真の友となられたのです。

　第二に、キリストは教えと行いにおいても神であると同時に人でした。キリストは神の権威を持って語り、「わたしが道であり、真理であり、いのちなのです」と宣言され、「わたしを見た者は、父（なる神）を見たのです」と言われて、神が偉大な愛と力と知恵に満ちあふれたお方であることを、その教えと行いによって見せてくださったのです（ヨハネの福音書１４章６、９節）。また、キリストは私たち人間の代表として、神と人を愛し、敵をも愛して、神のすべての命令に完全に従われました。そのため神は、私たちの代表であるキリストの完全な正しさを私たちの正しさと見なされました。そして私たちに、神に愛されている者として、聖霊によってキリストに似た者に変えられると言う、すばらしい目標を与えられたのです。

　第三に、キリストはその死においても神であると同時に人でした。神の子であるキリストの十字架の死は、ご自分の御子を与えられるほど私たち罪人を愛しておられる父なる神の、驚くべき愛の現われです。また、十字架でささげられたキリストのいのちが、すべての時代のすべての人間のいのちを合計しても余りがある、永遠で無限の神の子のいのちなので、一人のキリストの死がすべての人のための身代わりの死になることができたのです。キリストはまた、一つの罪もない人間でしたから、神が私たち人間の罪を罰するための身代わりとなって死に、私たちに罪の赦しの道を開いてくださることができたのです。

　最後に、キリストは復活においても神であると同時に人でした。キリストは復活によってご自分が全能の神の子であり、この世と罪と死に対する勝利者であり、すべてのものの支配者であることを明らかにされました。

さらに、キリストが人間の中の最初の人として、永遠のいのちと体をもって復活されたので、私たちもキリストのように復活し、永遠に生きるものとしていただけるという希望を持つことができるのです。

このように、神であり同時に人であるからこそ、キリストは完全に私たちを救うことができるのです。キリストだけが、私たちを今から永遠に神に完全に愛されて生きるものとし、神と人を心から愛する者とすることができる救い主なのです。

　ところで、「イエス・キリスト」というのは、「イエスがキリストです」という意味の信仰告白です。「イエス」は、「主は救い主です」という意味の名前です。「その名をイエスとつけなさい。この方こそ、ご自分の民をその罪から救ってくださる方です」と、天使はヨハネに告げました。（マタイの福音書１章２１節）。「キリスト」は名字ではなく称号（タイトル）です。キリストとは、旧約聖書時代からの多くの預言によって、真の神が世界を救うために遣わすことを約束しておられた救い主のことです。新約聖書は、ベツレヘムで処女マリアから生まれ、ナザレの町で育った大工、神の国について教え、多くの奇跡を行い、十字架で死んで、三日目に復活されたイエスこそが、神が預言しておられたとおりの救い主キリストであると告白しているのです。

　また、イエスは「インマヌエル」とも呼ばれています。これは、「神は私たちとともにおられる」という意味です（マタイの福音書１章２３節）。神であると同時に人であるキリストは、永遠に私たちとともに歩んでくださる救い主です。ぜひあなたも、イエス・キリストを、あなたの真の友、救い主、神と信じて、きょうも、あすも、そして永遠に、キリストとともに歩んでください。