私はよくうっかりミスをします。ドイツの東西分裂時代、私は国境に近い町で電車に乗りました。ところが、それは途中で二つに分かれて、前半分が当時私が住んでいた町の方に、後ろ半分は東ドイツに行く電車だったのです。私は後部車両に乗ってしまい、途中からは、自分が行くべき方向とは正反対の方へ進んでいたのです。実は、最初の人間アダムとエバも途中から彼らが進むべき方向とは正反対の方へ進んでいってしまったのです。

　神はアダムとエバを愛しておられました。神は彼らに神の栄光に満ちた世界、神と共に地球を管理する偉大な使命、全ての生命を理解して助ける能力、神に似た考えと生き方ができる性質、互いに愛し合い助け合えるパートナー、生活に必要なすべての物などの、満ち溢れる祝福を与えてくださいました。

　神は人間を、神の命令に機械的に従うロボットとしては造られませんでした。神が望まれたのは、彼らが自分を愛してくださる神を自発的に愛するようになることです。つまり彼らには神を愛さないで生きる自由も与えられたのです。エデンの園にあった二本の木が、この二つの道の象徴でした。一つは、神を愛して従い、神と共に永遠に生きる道で、これが「（永遠の）いのちの木」の実を食べることでした。もう一つは、神を愛さず、自分で善悪を決めて、自分勝手に生きる道で、これが「善悪の知識の木」の実を食べることでした。神は、善悪の知識の木の実を食べるのを禁じられました。人間が神から離れれば不幸になり、永遠に神から離れる（＝滅びる）ことになりかねないことを知っておられたからです（創世記２章８〜１７節）。

　アダムとエバは、善悪の知識の木の実を食べ、神に逆らって自分勝手に生きる道を選びました。これが原罪です。神はご自分に背を向けた彼らに、「あなたは、どこにいるのか」と呼びかけ、神と共に生きる道へ戻るよう、悔い改め（方向転換）を求められました。しかし彼らは神の愛を信じないで、自分の罪の責任を他人や悪魔や神のせいにしたのです（創世記３章）。それでも人間を愛しておられる神は、罪深い人間の代わりにご自分の御子（キリスト）を罰して人間を赦し、永遠に祝福するという、驚くべき恵みによる救いの道を示されたのです。真の神は、私たち神に逆らう罪人を救い、私たちを永遠に愛したいと願っておられる愛の神です。

　アダムとエバ以後、私たち人間はみな、神に逆らう自分勝手な道を歩んでいるのです。「私は神を信じている」という人はかなりいるかもしれません。しかし、罪人である私たち人間は、自分を幸福にしてくれるように神に求めたり、神が与えてくださる祝福（御利益）を求めたりするだけで、神ご自身を愛し、神とともに生きることを願っていません。一番大きな罪とは、永遠で完全な愛で私たちを愛していてくださる神を信じて愛さないことです。ある人々は道徳的、宗教的な生活をしています。彼らは、「私は良心に従い、善行に励んでいる。私は神に祝福されるはずの正しい人間だ」と言います。しかし彼らも、神が示しておられる救いの道ではなく、自分が正しいと思う道を歩んでいるだけなのです。

　私たち人間の良心は、神の完全に正しいみことばにくらべれば大変レベルが低く、小さな罪にはマヒしています。聖書の教えている罪とは、神に逆らうことであり、神のみことばからはずれたり反したりすることです。私たち罪深い人間はみな、考え（心）とことば（口）と行ない（体）において、毎日、神に対する罪を犯して生きているのです。東ドイツ行きに乗っていた私は、親切な車掌さんに助けられました。彼が私の間違いを教え、反対方向へ行く列車に乗り換えさせてくれたので、私は無事帰宅できたのです。

　ぜひあなたも、自分がまちがった道を歩んでいることを認め、方向転換して、自分勝手な人間を愛して待っておられる神のもとに帰ってください。恵み深い神は、あなたをありのままで受け入れてくださいます。そして、原罪のために、霊と心と生活のすべての面で堕落してしまっているあなたを、聖霊によって新しく生まれ変わらせて、神を愛して生きることができる、神の子どもにしてくださいます。

　神の子どもとされた私たちは、神のことばを完全に実行されたキリストに導かれて、神のみことばに従う歩みをさせていただきます。それは、神と人を愛することを学び続ける旅、神の愛のみことばを行なうことが喜びになる旅です。私たちは神の子どもとされた後も、父なる神に従わない罪を犯すこともありますが、恵み深い天の父の赦しの中で、悔い改めを繰り返しながら成長していきます。やがて私たちは、原罪も取り除かれて、完全にきよい神の御子（イエス・キリスト）に似た者に変えられ、いのちの木の実が豊かに実っている永遠の神の国に住むのです。