今までの歩みを振り返ると、私は、多くの人々の有益なアドバイスによってずいぶん助けられてきたなあと思います。たとえば、教会に行き始めたころ、一人の年配の方から、「人間を見ないで神様を見なさい」と言われました。その後、この忠告は大きな助けになりました。自分も含めて、クリスチャンとは「罪赦された罪人」なのですから、いろいろな弱さや罪深さを持っています。もし、私が恵み深い神を見ないで、人ばかり見ていたら、がっかりして教会から離れてしまっていたかもしれません。

　また、神学校に入ってすぐ、ある先生から、「神は人間とはまったくちがう偉大な方です。私たち人間が、神を知り尽くせると思い上がってはいけません」という助言をいただきました。神をもっと知りたいと願っていた当時の私にはショックでしたが、今はこの忠告を感謝しています。私はその後、真の神が自分の理解と思いをはるかに越えたお方であることを知らされ続けてきましたし、この偉大な神をほめたたえ、敬い、畏れることを学び続けさせていただいているからです。そういうわけで、私はまず第一にあなたに、「三位一体の神」が人間の知恵を越えた方であり、三位一体の教えが、私たちに完全には理解できない神の真理であることを認めてくださるように、お願いしたいのです。

　さてひとことで言うなら、三位一体とは、唯一の真の神が、父なる神と子なる神（イエス・キリスト）と聖霊なる神の三つの品格（または人格）を持っておられながら、ひとりの神であるということです。この三位一体ということばは聖書の中には出てきませんが、三位一体の真理は聖書がはっきりと教えていることです。

　キリスト教の異端や、聖書の一部をその教えに混合している多くの新興宗教などは、三位一体を否定しています。これらの誤った教えには、たとえば神には一つの位格（人格）しかなく、それが三つの違う姿で現れるという教え、キリストが父なる神よりも劣る神や天使であるという教え、聖霊が人格も心もない力やエネルギーであるという教えなどがあります。どうぞ注意してください。

　三位一体を説明するために、さまざまなたとえが用いられますが、どれも十分ではありません。一例をあげると、Ｈ２Ｏは、液体（水）、固体（氷）、気体（水蒸気）と三つに変わるけれども同じものであるという説明がありますが、これは、一つのものが三つの形になるという異端の教えにもなりかねません。

　三位一体とは、三つのものが一つのものであるというのではなく、三つの人格が一つであるということです。これを夫婦の関係で説明してみましょう。聖書は、夫婦が二つの別の人格であるにもかかわらず、一心同体（一つ）になると教えています。心から愛し合って、理解し合う夫婦は、考えも気持ちも一つになって、夫と妻というそれぞれの役割を果たすことができるでしょう。真の神は三つの人格が完全に一つで、心から愛し合っておられ、考えも願いも一つになって、父、子、聖霊としての、それぞれの働きをされるのです。

　三位一体の神が世界を創造なさった時には、父なる神が世界を設計され、子なる神が創造計画を実行され、聖霊なる神がすべてのものの中に働いて世界を完成されました。また、三位一体の神が私たちを救われる時には、父なる神が救いの計画を立てられ、子なる神であるイエス・キリストが救いの計画を実行され、聖霊なる神が私たちの中に働いて救いを実現してくださいます。三位一体の神はいつも一つになって働いておられるのです。

　聖書は、「神は愛です」（ヨハネの手紙第１・４章１６節）と教えています。愛は愛の対象がなければ生まれません。三位一体の神は、ご自分の中で互いに愛し合う対象を持っておられる神なのです。しかも、三つの人格がお互いに心から愛し合える、完全な愛を持っておられるのです。神以外に何もなかった天地創造の前ももちろん、いつでも永遠に、父、子、聖霊の三つの人格は、完全な愛の交わりの中におられるのです。

　聖書はまた、神が「平和の神」であると語ります。三位一体の神は、父、子、聖霊の三つのちがう人格があり、それぞれにちがう働きをなさっていながら、いつも、完全に一致しておられる、平和の神なのです。三位一体の神は、永遠から永遠まで、完全な愛と完全な平和の神であり、私たちに完全な愛と平和を与えてくださる神なのです。

　私たちクリスチャンは、三位一体の神を信じています。そして、教会は、三位一体の神を信じた人々に、「父、子、聖霊の御名によって」洗礼（バプテスマ）を授けます。（マタイの福音書２８章１９節）。クリスチャンは教会で共に三位一体の神を礼拝し、お互いのために、父なる神の愛、御子イエス・キリストの恵み、聖霊の交わりを祈りあいます。